デジタル化を行ううえで、大きい書籍や貴重な資料をデジタル化する際には、いくつかの問題があります。
まず、サイズの問題があります。通常のフラットベッドスキャナでは、大型の書籍や図面を一度にスキャンすることが困難です。ページごとに分割してスキャンする必要があり、作業に膨大な時間がかかってしまうでしょう。
次に、資料の保護という観点があります。古い書籍や貴重な文書は、扱いに細心の注意が必要です。通常のスキャナでは、資料を押し付けたり無理に広げたりする必要があり、破損のリスクが高くなります。
さらに、画質の問題も無視できません。特に、美術書や写真集などでは、高い解像度と色再現性が求められます。しかし、大型の資料を部分的にスキャンして後から合成する方法では、画質の一貫性を保つことが1度に全体をスキャンする方法よりも難しくなります。
最後に、作業効率の課題があります。大量の資料をデジタル化する際、従来の方法だとより多くの時間と人手がかかります。
これらの課題を解決し、大型書籍や貴重な資料を効率的かつ安全にデジタル化する方法として注目されているのが、オーバーヘッドスキャナです。
オーバーヘッドスキャナとは
オーバーヘッドスキャナとは、その名の通り、スキャンする対象物の上方からデジタル化を行う装置です。従来のフラットベッドスキャナとは大きく異なる特徴を持ち、大型書籍や貴重資料のデジタル化に革新をもたらしています。
従来のスキャナとの違い
スキャン方法
- フラットベッドスキャナ:資料を機器のガラス面に密着させてスキャンします。
- オーバーヘッドスキャナ:資料を開いた状態で下に置き、上部のカメラでスキャンします。
資料へのダメージ
- フラットベッドスキャナ:資料を押し付ける必要があり、特に古い資料や製本された書籍にはストレスがかかります。
- オーバーヘッドスキャナ:非接触でスキャンするため、資料へのダメージを最小限に抑えられます。
スキャン可能なサイズ
- フラットベッドスキャナ:機器のガラス面サイズに制限されます。
- オーバーヘッドスキャナ:より大型の資料も一度にスキャン可能です。
基本的な仕組みと特徴
高解像度カメラ
上部に設置された高性能デジタルカメラが、資料を撮影します。
均一な照明
影や光のムラを防ぐため、専用の照明システムが搭載されています。
画像処理ソフトウェア
撮影された画像を自動的に補正し、高品質なデジタルデータに変換します。
高速スキャン
1ページあたりのスキャン時間が短く、大量の資料を効率的に処理できます。
オーバーヘッドスキャナは、これらの特徴により、大型の書籍や貴重な資料を安全かつ高品質にデジタル化する必要がある場面で、その真価を発揮します。
オーバーヘッドスキャナの主な利点
オーバーヘッドスキャナは、従来のスキャン方法に比べて数多くの利点を持っています。その主な利点は次の通りです。
大型書籍や厚みのある資料も簡単にスキャン
- 大きなサイズの対応:A2サイズやさらに大きな資料でも、一度にスキャンが可能です。
- 厚みへの対応:厚い書籍や製本された資料も、開いたままの状態でスキャンできます。
- 柔軟性:平らにできない資料や立体物なども、ある程度の高さまでスキャン可能です。
資料を傷つけずにスキャン
- 非接触スキャン:資料に触れることなくスキャンするため、貴重書や古文書の劣化を防ぎます。
高速スキャンによる作業効率の向上
- 短時間スキャン:1ページあたりのスキャン時間が短く、大量の資料を効率的に処理できます。
- ページめくり:資料を上向きのままスキャンするのでページのめくりもスムーズに行えます。
高画質でのデジタル化が可能
- 色彩の正確さ:専用の照明と高性能カメラにより、元の資料の色を忠実に再現します。
- 画像補正:組み込まれたソフトウェアにより、自動で歪みや影を補正します。
これらの利点により、オーバーヘッドスキャナは様々な場面で活躍しています。図書館での貴重書のデジタル化、企業での大判図面のアーカイブ、美術館での作品記録など、従来は困難だったデジタル化作業を、効率的かつ高品質に行うことができます。
さらに、これらの利点は単に技術的な面だけでなく、コスト削減や作業時間の短縮、資料の長期保存にも大きく貢献します。
様々な用途と活用事例
オーバーヘッドスキャナの優れた特性を活かし、様々な分野で活用されています。具体的な用途と活用事例は次の通りです。
図書館での貴重書のデジタル化
- 江戸時代の和本や明治期の貴重書をオーバーヘッドスキャナでデジタル化
- 非接触スキャンにより、脆弱な資料も安全に処理
- 高解像度でのスキャンにより、細かな文字や挿絵まで鮮明に再現
メリット:
- 貴重な資料の保存と同時に、広く一般に公開可能に
- 研究者が遠隔地からでも資料にアクセス可能
企業での大きい図面や設計図のデジタル管理
- A1サイズの大きい図面も一度にスキャン
- 過去の紙ベースの図面を全てデジタル化し、クラウドで管理
メリット:
- 保管スペースの大幅削減
- 図面の検索・共有が容易に
- 災害時のバックアップとしても機能
美術館・博物館での作品記録と保存
- 絵画や工芸品を高精細でデジタル撮影
- 立体物も適切な角度からスキャン可能
メリット:
- 作品の経年変化の記録が可能に
- オンライン展示やデジタルカタログの作成が容易に
- 修復作業の参考資料としても活用
官公庁での文書管理
- 大量の行政文書を効率的にスキャン
- 古い公文書も安全にデジタル化
メリット:
- 情報公開請求への迅速な対応が可能に
- 災害時の重要文書保護
- 業務効率の大幅な向上
このようにオーバーヘッドスキャナは、情報の保存・活用・共有に役立っています。
当社では高性能なオーバーへどスキャナを導入しています。大きい図面や貴重資料などのスキャンについて気になることがあればお気軽にお問い合わせください。